刃霧 要

JC14巻 「追ってきませんでしたね」 仙水と共に行動をしている
幽助のアパートに仙水と襲撃に来る
JC15巻 チャリでトラックを追う幽助の後ろからバイクで追ってくる
そのまま幽助と戦闘
飛影にとどめを刺され倒れる
JC17巻 仙水が倒された直後、神谷と事後談義
「飯食って学校に行く」 普通の生活に戻ると述べる
一週間後、動物虐待をしたクラスメートを「狩りに行ってくる」と
言い残して去る

<公式プロフィール>
●17歳 O型
●12月3日生まれ
●母・兄・妹との4人家族
●高校卒業後 失踪
●母への月20万の仕送りは失踪直後から5年ほど続く

(以下ジャンプ企画ページより)
●市立高校
●父親は警官だったが二年前殉職
●世間体とは裏腹に家では酒乱だった父を畏怖し軽蔑していた
●夢は弁護士か犯罪者



★悪の魅力に満ちた珍しいタイプの敵キャラ

原作では戸愚呂弟以来、敵キャラがとても魅力的に描かれるようになった。戸愚呂弟にせよ仙水にせよ、悪なんだけどそれぞれが戦う理由を持っていて、それぞれの正義があって、おまけにどこか人間臭さの残る、完璧には憎めないキャラだった(そういう部分が描かれるのは大体幽助に倒された後で取り返しのつかない頃なのだが)。御手洗や天沼に至っては悪どころか仙水に利用されただけの繊細な心の持ち主だった。
ところが刃霧は、そういうキャラクター達とは一線を画した魅力の持ち主のように思える。まず彼は自己の正義こそ持っているかもしれないが、戦う理由云々ではなく、あたかもゲームを楽しんでいたかのような発言をしている(「まあいいさ それなりに楽しめた」(17巻))。仙水が負けたからと言って特に悔しそうなそぶりも無い。彼にとって仙水の壮大な計画は当たればもうけもの、外れても別に問題は無い、という程度のものだったようだ。それだけなら純粋な子供である天沼と変わりは無いが、刃霧には人間臭さというものが微塵も感じられない。読者の同情を誘い共感させるような発言はひとつもしていない。
それでも彼はとても魅力的な敵キャラなのである。それはなぜか?



★刃霧の魅力その1 不言実行型

よくある憎まれ役の敵キャラは相手に向かって傲慢な態度を取ってしゃべくり倒し、相手を精神的に追い詰めておきながら、一発逆転され「バカな」と呟きつつ失意のうちに倒れる(このタイプの悪役は枚挙に暇が無い)。刃霧の場合、相手に攻撃するときは完全に無言である。幽助に自分の能力を説明した以外は、バトル中ほとんど何も喋っていない。仙水の片腕として行動していたときも、幽助を追っていたときも、黙々と正確に攻撃を放つ。この仕事人的姿勢が何とも言えずカッコいい。



★刃霧の魅力その2 遠距離攻撃型

彼が攻撃中ほとんど喋らないのは、性格の他に攻撃が遠距離タイプであることも一役買っている。敵の目の前ではなく、視界に入らないほど遥か遠いところから狙い撃ちする。こんな攻撃の仕方をする敵キャラは原作中彼一人だ。一対一の殴り合いで勝負をつけてきた幽助にとっては完全に新手の敵であったし、その分読者のこちら側もハラハラさせられた。狙った獲物は決して逃がさない恐ろしいタイプである。



★刃霧の魅力その3 実力所持者

彼は、接近戦であれば完全に優勢であろうはずの幽助を自分の力だけでピンチに追い詰めた。飛影がいなければあのまま勝負がついていたかもしれない。また、仙水と常に行動を共にし、6人の能力者のうち一番信頼を置かれていたのは刃霧であった。幻海にも「相当の能力者であることは間違いない」(14巻)と言わしめた。攻撃の正確さと威力、年に似合わぬ度胸を兼ね備えた彼は文句無く実力者であった。



★刃霧君の魅力その4 真の不良

別に幽助たちを不良もどきと呼ぶつもりはない。彼らだって自認しているとおりの立派な不良である。だが彼らは良い意味でとても人間臭い。万引きやカツアゲをやったり、喧嘩っ早かったり、他校の生徒に因縁をつけ合っては縄張り争いをしたりと、年相応の突っ張り方をしている。
ところが刃霧の場合は、もはやそういう次元ではない。同じ年代の他人とは組まず、十は年の離れた仙水に認められ対等に組んでいる。幽助たちは町で不良軍団がナイフを抜いたときに「いきなり光モン抜きやがった」とビビったりするが、刃霧は平然と数十本もの刃物を幽助に目掛けて飛ばす。銃の扱いにも慣れている。ある意味幽助たちよりもずっと不良なのではないだろうか。
人を殺すことに対しても、全く抵抗を見せない。幽助を撃とうとしたときに緊張のそぶりすら無かった様子からして、あるいは今までにも人間を手にかけてきたことがあると想像しても違和感は無い。黒の章を見せられたかどうかは不明だが、仮に見せられていなかったとしても仙水の計画には普通に加担したかもしれない。
彼には不良という肩書きすら子供っぽく聞こえるので、もっと言えば「犯罪者」のほうがしっくり来るのかもしれない。原作で犯罪を犯している描写は無かったにも関わらず、彼には一種の背筋を凍らせるほどの悪が内在しているように見える。



★刃霧君の魅力その5 他人を頼らない

仙水とは絶妙なコンビネーションを見せたが、基本的に刃霧は補佐役に徹し、他の誰かの力を借りて攻撃をするということは無かった。幽助を追い詰めたときもたった一人でクールに戦っていた。悪は悪でも、仲間あるいは部下を楯にして後ろで偉ぶるという、中身の無い悪とは違う。手段は選ばずとも、己の力のみを信頼し一匹狼のように戦う彼。仲間の絆を強みに戦う幽助たちの魅力とは全く違った性質が垣間見える。



まとめると、彼は常に無言でクールで、特殊な攻撃法を持ち、実力を兼ね備え、背筋が凍るほどの悪で、誰にも頼らない一匹狼である。
ついでに切れ長な目が印象的な美丈夫である。
誰が何と言おうとシビレるほどカッコいいのである。


ただし彼に関して、肝心な点が判らずじまいである。
彼は「何故」こんな尋常ではない人間に育ったのか?

家庭が荒れていたからというのは大きな理由のひとつだろうが、他にも彼の人格形成を左右する要素があったのなら、是非知りたいところである。
そこはもう原作者からの公式設定が出ることは残念ながら無いので、個人の想像に任せて良い部分だとは思うが。


ちなみに個人的には彼が原作中で一番セクシーなキャラだと思っている。
ただし恋人にしたらおそらく破滅であろう。セクシーで少し危険といえば蔵馬もだが、蔵馬のほうがまだ安全な家庭を築いてくれそうな感じがする。



★覚え書きという名の憶測

●彼の通う市立高校の制服は、アニメで同級生が学ランを着ていたことから必然的に学ランと予測される。
が原作中では彼らの姿は一切出てこないので、想像は自由である。
もし本当に学ランなら彼はある程度着崩していたのではないかと勝手に想像してみる。シャツとか普通に出していそうな。

●彼の成績はどの程度だったか。かなり良いかかなり悪いかのどちらかのように思える。彼に中途半端なものは似合わないからである。
彼の夢は弁護士か犯罪者。後者は半分達成されているようなものだが…(人に危害は加えるわ刃物は飛ばすわ)
弁護士を将来の夢の選択肢に置く限り、成績はかなり良かったのではないかと想像できる。