::独りよがりの幸福::


「今度の週末、茶でも飲みにいかんか?」

幻海のほうから、静流を誘うことは普段はあまりなかった。
いつも家に引きこもりがちで、ゲームをしながらのんびりと時間をつぶすことの多い幻海を見かねた静流が、
たまに外に連れ出すというのがこの古き友人達の常だった。
だから、幻海から突然そんな電話が来たある日の午後、静流は一瞬目を丸くせざるを得なかった。

「いいよ。いつもの喫茶店でいいのかい?」

待ち合わせを決めて受話器を置いた静流は、電話を取る前までくゆらせていたタバコをもう一度灰皿から取り出して、くわえた。
どうしたんだいバーチャン、珍しいじゃないの。
そう言おうと思ったが、咄嗟に働いた勘のせいでその言葉を飲み込んでしまった。

何となく予想がついてしまう自分が、嫌でもあった。




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